規律に縛られた大奥女中と、華やかな人気役者の恋物語『絵島事件』は、江戸時代の大スキャンダルだった。絵島は七代将軍徳川家継の生母である月光院に仕えた大奥年寄りである。絵島が起こした事件とは、『兼山秘策』によると芝増上寺への参詣にかこつけて、芝居見物をしたうえ、生島新五郎ら数人の役者を呼び寄せ、酒宴におよんだということである。さらに同書では、絵島について四十歳近い派手好みの美しい女性で、生島も非常に美男子であったと述べている。
当時、同様の事件は他にもあったにもかかわらず、絵島事件だけが騒がれたのは何故か。それは絵島の主人月光院を排斥するため、六代将軍正室天英院を中心とした一派や幕臣たちが、権力闘争の材料として攻撃の槍玉に上げたからだ。勢力争いに翻弄された哀れな絵島は、信濃国へ流刑となった。生島は三宅島へと流され、連座者が一千人以上におよぶという大事件となった。江戸を追われ、恋人との仲を裂かれた絵島。どれほど我が身の不運を嘆いたことだろうか。
墓はカビとコケで汚れ、見るからにわびしく、悲しい。
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