ワンマン首相、白足袋総理、いつもチャーチルのように葉巻を口にくわえて、眼鏡ごしに笑っているユーモアのある首相。戦後総理大臣としては超一級の人物だったのが、この吉田茂である。しかし、彼にも人生の辛酸をなめていた時期があった。東大政治科を卒業後、外交官になったが、日支戦争反対を唱えてから冷飯組に落とされ憲兵隊にマークされる日々を送っていた。国際感覚を持っていた彼は恐らく日本の敗戦を予感していたのであろう。
しかし、戦後の廃墟から立ち上がった彼は、男として、政治家として、花の生涯であったといえよう。
首相を辞めて大磯の私邸で悠々自適の生活を送っていた彼に、訪ねた人が「血色がよいですね。なにか特別な長寿食でも?」と聞くと、即座に「ハハ、わたしはいつも人を食ってますからネ」という答えが返ってきたという。
だが、このユーモアの蔭に、信念の固さと頑固さが潜んでいることは定評がある。戦後、米国務省顧問が日本を再軍備させようと来日したときも、徹頭徹尾反対した。
男の花道を飾ったともいえる人物にしては、墓は質素である。東京の青山墓地には、歴史に名をとどめた人々の墓が多いが、この吉田茂の墓ぐらい、小さく質素な墓は見ることができない。
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