
「月もおぼろに白魚の、かがりもかすむ春の空」は黙阿弥の代表作の一つ『三人吉三廓初買』の冒頭の台詞である。七五調でリズム感のある台詞が彼の作品の特徴であった。生涯現役を貫き、幕末から明治にかけて三百余りの作品を書いた多作の人でもあった。
しかし、狂言作者としてのデビューは遅く、黙阿弥の作品のほとんどは四十歳過ぎに書かれたものである。早熟だった彼は、少年期に遊蕩児となり勘当されている。放浪生活を送りながら芝居小屋に出入りし、狂言作者の門下生になったのは二十歳の頃だった。その後も紆余曲折があったが、三度目の正直で作者生活に定着した。勝負事・酒・煙草もせず、趣味や道楽とも縁がなく、ただひたすら書き続けた。洒落ッ気に満ちた作風とは正反対の生活ぶりで、“閻魔様のよう”といわれたという。
劇作家の大御所『黙阿弥の墓』はペンネーム墓といえよう。堂々たる中央一基墓で、上台石に家の名前が記してある。
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墓地所在地は、変更になっている場合があります。
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