
酒中の虫、という諺がある。中国の詩人・李白も酒中の虫であったが、日本の歌人・牧水も大酒豪だった。毎日の酒量が二升三升といった具合だから肝臓を冒されるのは当然であろう。
牧水は末子で長男であった。父は祖父の時代からの医者を継ぎ、延岡の町で開業していた。両親の愛を一身に集めて育っていたが、ひとりで自然と親しむ多感な少年だったという。幼少の頃から姉たちの読み古した雑誌を読み、十一歳の頃には小説まで読んでいたという早熟な子だった。村の小学校は首席で卒業、延岡中学から早稲田大学へと進んだ。文才は中学二年のときから認められたそうだから、文学に対する自信があったのだろう。
この自信過剰が、一方では異常性格者にも見える。酒に浸らなければ歌ができない。孤独を愛しているくせに、人を集めて酒盛しなければいけない日々。どこか健全な心が抜けていて、生活はいつも破産状態だった。旅が好きで、子供の名を、『旅人』『富士人』とつけている。
墓も変わっている。正面、裏面にも入口があり、どこからでもどうぞと招き入れる感がする。
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墓地所在地は、変更になっている場合があります。
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