芥川龍之介の遺書の中に『ある旧友へ送る手記』という作品がある。「僕は冷やかにこの準備を終り今は唯死と遊んで居る・・・・・・われわれ人間は人間獣であるために動物的に死を恐れて居る、いはゆる生活力といふのは実は動物力の異名に過ぎない。僕もまた人間獣の一匹である・・・・・・」これが自殺を決意した龍之介の叫びなのである。そこには知的な香りと、芸術家の才能を見る。もっともデビュー作の『鼻』から『羅生門』そして『黄雀風』等々、すべて凄さの文学といっても過言ではあるまい。凡人をよせつけない鬼気が文壇の帝王たらしめたのだろう。
彼の経歴は、母親が産後に発狂し、養子に出されるなど、まさに逆運育ちであった。自分もいつか発狂するのではないかという恐怖観念が自殺に追いやったとも思われる。
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