
芸術家は貧困もしくは豊か、どちらからか生まれるという。樋口一葉も同時代の詩人石川啄木と同じように、貧困の中から珠玉の作品が生まれた。下級武士の子に生まれた一葉。父の生前は豊かに暮らしていたが、十八歳のとき父が事業に失敗し、病死してから一家の生活が彼女の肩にかかってきた。幼少の頃から大変な読書家であった一葉は、文筆による独立を決意する。
時の作家、鴎外、露伴、緑雨たちも激賞したが、文壇にみとめられたのは彼女の死の年だった。傑作と名の高い『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』『われから』『わかれ道』などは、彼女の死の二年前からの作品である。そしてわずか二十五歳でこの世を去った。それは宵の明星の如く輝き、そして消え去った作家であった。
墓も、彼女の薄幸を示すかのように、うちひしがれそうな姿のように見える。
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